この辺は新市街で、ゴシック地区などがある旧市街とは矢張り雰囲気が違っています。
バルセロナに関わるギター音楽家としては、まず第一にフランシスコ・タレガ(Francisco Tarrega)が挙げられます。現代クラシックギターの基礎を作り、「近代ギター音楽の父」と称されるタレガは名ギタリストであり、また数多くのクラシックギターの名曲を作曲しました。タレガは私の最も好きなクラシックギターの作曲家でもあります。
フランシスコ・タレガは1852年にバレンシア州ビリャレアルに生まれ、若い時にはマドリッドに出て、マドリッド音楽院で学んだこともあります。しかし、結婚してしばらく後にはバルセロナに居を定め、1888年から亡くなる1909年(57歳)までバルセロナ市内の住所、234-1 Calle de Valenciaに住んでいました(エミリオ・プジョール著「タレガの生涯」<濱田滋郎訳、現代ギター社刊> P.107による)。
この場所はアシャンプラ地区(拡張地区)にあり、グラシア通りにあるカサ・バトリョ(アントニ・ガウディが増改築した世界遺産の住宅)からは500m位しか離れていません。
さて、タレガはクラシックギターの数々の名曲を書きましたが、その中で私の最も好きな曲に「アラビア風奇想曲」(Capricho Arabe)があります。
私がこの曲を最初に聴いたのは高校2年(16歳)の時です。高校2年の春から勉強がスランプになった、その反動もあり、私はカルカッシ教則本を買って、自己流でクラシックギターを練習し始めました。そんな時、郷里、静岡市内の楽器店でたまたまアンドレス・セゴビアが演奏する「アラビア風奇想曲」のレコードを試聴しました。甘く、美しい音色、それでいて俗っぽくならず気品がある演奏は私にとって衝撃的でした。高校2年の1年間は、いずれ自分もこの曲を演奏できるようになりたいと思い、又どうしたらセゴビアのようなあんなに美しい音色が出せるのだろうかと考えながら、ひたすら一人でギターを練習していました。
しかし、その時はこの曲のタイトル「アラビア風」の意味を特に考えもしませんでした。今回わずか10日間ではありましたが、スペイン各地を訪ね、イスラムがスペインの歴史を刻み、キリスト教文化と混じり合い、融合している姿を自分の目で見ると、タレガが「アラビア風」と言うタイトルの曲を書いた理由が今ようやく自分の実感として察せられるような気がします。
考えてみれば、高校2年の時にギターを通じてスペイン音楽に触れて以来、ほぼ半世紀経って、ようやく自分はスペインの地を踏んだことになります。
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