2014年5月14日水曜日

「稲垣稔追悼コンサート」を聴いて

私の好きなギタリストの一人である稲垣稔さんが去年6月末に胸腺がんのために54歳の若さで亡くなって、間もなく1年になろうとしています。そんな中、5月11日(日)に「稲垣稔追悼コンサート」が松本市のザ・ハーモニーホールで開催されました。

1959年生れ、兵庫県明石市出身の稲垣稔さんは、音楽工房グランソノリテ(東京都国分寺市)を主宰する田口秀一氏と二人で2007年に「第1回蓼科高原サマーセミナー」を立ち上げて、開催し、以後、毎年8月下旬に長野県内でクラシックギターサマーセミナーを開催するのが恒例でした。私は蓼科に住んでいることもあり、稲垣さんと田口さんのお二人が開催するこの「サマーセミナー」は第1回目から全て聴講しています。2010年8月の第4回目には受講生として私は参加し、稲垣さんと、ゲスト講師だったレオナルド・ブラーボさんから個人レッスンを受けました。

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ギタリスト・稲垣稔氏 2010年8月20日/第4回蓼科サマーセミナーにて

2007年の第1回蓼科サマーセミナーでの講師コンサートで、私は稲垣さんの演奏を初めて聴き、その比類ない美しい音色、高度で安定したテクニックと魂のこもった演奏に驚きました。その後、稲垣さんが月1回、明石から東京に来て、新宿の楽器店「絃楽器のイグチ」で個人レッスンを行っていることを知り、私もアポイントを取り、2009年2月から2011年2月までの約2年間に全部で6回、稲垣さんの個人レッスンを受けました。

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私が受けたのは不定期での、アポを取っての個人レッスンでしたので、継続的な基礎教育ではなく、その時練習している曲を教えてもらっていました。レッスン時に、稲垣さんは教える曲を自分で弾いてみてから、アドバイスをしてくれました。私としては、こんな一流の名手が自分の目の前で一対一でギターを弾いてくれるのですから、それを聴いているだけでも幸せな気持ちでした。そして、いつも練習中の曲の不明点などについて的確なアドバイスをしてくださいました。稲垣さんは謙虚で、純粋な人柄でした。ですから、今、その頃のレッスンを振り返って考えると、いつも暖かみにあふれた、楽しいレッスンでした。


さて、この日は稲垣氏と親交のあったギタリストたち10人が集まり、演奏されました。中でも、フランス人ギタリスト&作曲家のジャン・マリー・レーモン氏は、稲垣さんとは20代からの親友で、各地での追悼コンサートのために今回特別に来日されました。


演奏者と演奏曲目は次の通りです。

<第一部>
1、椎野 みち子   「龍人」 (椎野 みち子)
2、竹内 竜次    「スクリャービンの主題による変奏曲」 (A・タンスマン)
             「フリア・フロリダ」 (A・バリオス)
3、レオナルド・ブラーボ  「Seras verdad」 (キケ・シネシ)
                                    「アディオス・ノニーノ」  (A・ピアソラ)
                     「澄み切つた空」 (キケ・シネシ)
4、掛布 雅弥    「ギター組曲 コユンババ」 (C・ドメニコーニ)
                             1.モデラート  2.モッソ  3.カンタービレ  4.ブレスト
5、伊藤 正己     「アンクラージュマン Op.34」(二重奏 with 竹之内美穂) (F・ソル)
     ~休憩(15分間)~
<第二部>
6、田口 秀一      「Alter Ego」 (ジャン・マリー・レーモン) 二重奏 with J・M・レーモン
                           「LA MILANAISE op.143」 (F・クレンジャンス)
              「ベニカシムの思い出 op 142」 (F・クレンジャンス)
7、清水あずさ      「シンフォニア 9番 BMW795」/「トッカータ BMW830」 (J.S.バッハ)
8、キム・ョンテ      「内なる想い」 (V・アセンシオ)
                     I.心静かに  Ⅱ.輝き  Ⅲ.安らざ  Ⅳ.喜び  V.苛立ち
9、竹之内 美穂   「森に夢見る」  (A・バリオス・マンゴレ)
                 「ブエノスアイレスの春」  (A.ピアソラ)
10、ジャン・マリー・レーモン  「Pour un reflct dans l'eau」(水面に映る面影によせて)
                    「Un jour de Septembre」 (9月のある日)
                                     「Poema Nostalgico」(ノスタルジックな詩)
                      「Canto Bajo la luna」(月かげの歌)
                                     「Jardin secret」 
                     「Suite des constellations」
                    (全てジャン・マリー・レーモン作曲)
11、レオナルド・ブラーボ、竹内竜次、竹之内美徳、椎野みち子、キム・ヨンテ、清水あずさ、田口秀一、伊藤正己、ジャン・マリー・レーモン(合奏)
                    「Sous le ciel d'Akashi」(ジャン・マリー・レーモン) 


<稲垣稔追悼コンサート/全員合奏 2014年5月11日>

午後3時から始まり、終わったのは夕刻6時半頃、3時間半の長丁場でしたが、時間の長さなど感じさせない、充実した、それぞれの演奏者の個性あふれる、素晴らしいコンサートでした。
こんな豪華なコンサートを聴くことができたのも、稲垣さんのお蔭です。
稲垣さんの素晴らしいギター演奏も、その素敵な人柄も、演奏者の皆様の中で、そして、我々、稲垣ファンの中で今も生きていると、そう思えるコンサートでした。


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