2011年12月18日日曜日

小原安正著 「ギタリストの余韻」


今年の夏頃から、ギタリスト小原聖子先生が蓼科にいらした時に、縁があって時々私は聖子先生のギター・レッスンを受けています。
蓼科で聖子先生のレッスンを一緒に受けているYさんが先日、聖子先生の父上である小原安正氏の著作「ギタリストの余韻」(音楽之友社1988年刊)を貸してくれました。


小原氏の自伝ですが、読み出したら面白くて、遅読の私でも一気に読んでしまいました。
「ギタリストの余韻」表紙 by Poran111

小原安正氏(1914~1990)は日本でのギター音楽がまだ確立されていない時代にプロ・ギタリストとしての道を歩み始め、日本のギタリストの草分けであり、日本のクラシックギター発展の道を拓いた人と言って過言ではないでしょう。

小原安正氏写真1970年頃/「ギタリストの余韻」より by Poran111
その小原氏がギターを習い始めた時の事から、ギタリストとして、また指導者として歩き始めた過程と苦労話が生々しく語られています。


ギタリストとなった後、1954年に40歳で初めてスペインに留学し、約1年半にわたってスペインに滞在しました。その間、マドリード国立音楽院でサイエンス・デ・ラ・マーサ(1903~1982)教授による授業を受けたこと、バルセロナに出向いてのエミリオ・プジョール(1886~1980)から受けた1ヶ月の指導、1995年夏にはイタリアのシェナに行き、1ヶ月間キジ音楽アカデミー・夏季セミナーで不世出の天才・アンドレス・セゴビア(1893~1987)から直接指導を受けたことが語られています。今から見れば伝説的な巨匠達から受けたレッスンの具体的内容は大変興味深いです。


アンドレス・セゴビアのクラス/小原安正氏 1955年夏 by Poran111

その後、アンドレス・セゴビアの2回目の来日(1959年)、ナルシソ・イエペス(1927~1997)の初来日(1960年)と続き、そのいずれもに小原氏が滞日中のアテンドをし、又そこに語られる裏話も面白いです。

聖子氏宅でくつろぐナルシソ・イエペス by Poran111

私のような団塊の世代前後の人間にとっては、当時有名だった国外、国内のギタリストや当時の出来事と重ね合わせ、なるほどそうだったのかと思うことも色々あり、興味深く、貴重な読み物でした。
ただ、この本が今は絶版になっているらしいことはちょっと残念です。

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